親と話し合いをする
実家がうまく活用できず、空き家になっている状態が恒常化してしまう原因の一つに、親とのコミュニケーション不足が挙げられます。親元を離れて生活し、遠隔地に居住していればなおさらですが、「実家が空き家になるなんて、まだまだ先のことだから」などと考え、事前に親との間で空き家になった後の実家の扱いについて話し合いが済んでいる家庭は多くないようです。実家が空き家になった場合の活用方法としての主な選択肢は、売却や第三者に賃貸するなどが一般的です。親が認知症になったり死亡したら話し合うことは不可能となります。そうなる前に、話し合いの機会を設けて実家の不動産の処遇についての方針を決めておくことをお薦めします。
近い将来、親が住まなくなった実家の空き家をどうするかに関して、関係する家族全員が話し合いに参加することが重要です。例えば親が死亡した場合、相続問題が発生します。その際、法定相続人だけでも、配偶者、子の他に時として、孫や兄弟姉妹まで範囲が広くなく可能性もあります。後々のトラブルを回避するためにも全員で基本方針を確認しておくことが重要です。
ただし、親自身の希望は何よりも尊重されなければなりません。実家の土地建物は財産ですから、親との関係を悪化させず前向きな意見交換を行うためにも、日頃からしっかりとしたコミュニケーションをとっておくことが大切です。特に、実家の土地建物の処遇を決める話し合いの機会にあたっては、たっぷりと時間をかけて話し合うようにして、親が実家の土地建物に抱いている愛着心などを傷つけることのないよう、慎重に話をすすめることを心掛けるようにしましょう。
親が認知症になる前にすること
親との話し合いをすすめている中、もし実家が空き家になった場合には、第三者に売却するということが決定していたとしても、急に親が認知症になり判断能力を失った状態で施設等に入居する際、別の問題も発生します。
実家の名義が親の名義になっていた場合、そのままでは実家が空き家になったからといって、子供が勝手に売却することは困難です。親の家や土地は親が生存している限り親の所有物ですので、親族であっても勝手に売ることはできず、子供が売却するには、原則として、代理として親から権限を与えられた旨の委任状が必要になります。しかし、親が認知症を発症して委任に関する意思表示も困難なことも起こりうるでしょう。
そのような場合に備えて、家庭裁判所が成年後見人を選任する成年後見制度を利用するという方法も考えられます。もっとも、成年後見制度は何でも自由に親の財産を処分できるわけではなく、そもそも子供が成年後見人に選任されるとは限りません。そこで、親が元気なうちに子供との間で親の判断能力が衰えてきた場合、親に代わって財産を管理したり必要な契約締結等を行える権限を委ねる任意後見契約を公正証書で交わしておけば、家庭裁判所の許可なしに居住用不動産を売却することも可能です。
あるいは、実家が空き家になった場合に売却するということについて、事前に親との間で話し合いが成立しているのであれば、空き家の登記名義を親から子に移すなどしておくと、急に親が認知症等の症状を発症しても、事前の意思に沿った実家不動産の処理を迅速に行うことが可能になります。
一戸建ての場合にしておくこと
対象の空き家が一戸建ての場合、筆界(隣地との土地の境界)のトラブルや地積(土地の面積)に関するトラブルが増えています。例えば、実家から離れて暮らしている期間が長いために、実家の近隣の様子を認識しておらず、隣地や道路との境界線が曖昧になっていることが少なくありません。このような場合、例えば登記上の地積と実際の地積が相違することも多く、売却がスムーズに進まないこともあります。そこで、土地家屋調査士に依頼して、境界確定図を作成し境界標を設置するなどして、筆界に関する書類を揃えておくことをお薦めします。
実家に住宅としての価値がない場合
実家が空き家になった場合の活用方法として、住宅として活用するには価値がないが、店舗等の居宅とは異なる用途としてであれば売却できるという場合もあります。この際、注意しなければならないのが、建築基準法に基づく用途変更手続き(建築確認の取得)が必要になる場合があるということです。また、改修工事が必要になることもありますので、用途に応じて別途必要な費用を慎重に見積もることが重要です。
- 事前に親との話し合いにより意向を確認しておく
- 認知症等に備えて実家の名義を親から子へ変更しておく
- 境界標や境界確定図を作成する(特に一戸建ての場合)
- 用途変更手続きの必要の有無・改修工事の要否を確認し実施する