相続不動産が空き家になる

空き家を相続する人が増えている

現在、我が国の空き家問題が深刻になりつつあることはご承知の通りです。平成26年に発表された総務省のデータでは、全国の空き家の数はおよそ820万戸に上ります。総住戸数に占める割合は13.5%となり過去最高を更新しました。つまり、ほぼ7軒に1軒が空き家となっている計算です。

なぜ、これほどまでに空き家が増えてしまったのでしょうか。その大きな原因の一つが相続にあるのです。典型的な相続の例を挙げて説明しましょう。

すでに父親が亡くなり、母親と二人の息子という家族の場合です。母親は息子たちの実家に一人暮らしをしています。二人の息子は結婚してそれぞれマイホームを持っています。ここで母親が亡くなるとどうなるでしょうか。

二人の息子にはそれぞれ家庭があります。住み慣れた街で子供たちも地域の学校に通っています。そのような状況でどちらかの家庭が住み慣れた自宅を手放して実家に移り住もうとはなかなか思わないのが実情です。たとえその実家が良い場所にあったとしても、妻や子供と一緒に住み慣れた街を離れて実家に引っ越すということには大きな決断と労力を必要とするからです。

持ち家のある人が実家を相続している

相続によって空き家が増加した原因に親が長生きするようになったことが関係しています。そして、我が国の持ち家率は約8割といわれています。50代ともなると大半の人が一戸建てかマンションの自宅を持っています。したがって、親から相続した実家に住む理由がないのです。

戦後すぐの時代の平均寿命は50代でした。もし、現代の我が国の平均寿命が50代ならば、実家を相続する子供は20代ということになります。20代で持ち家のある人は少ないので、そのような状況であれば相続した実家に引っ越す人は格段に増えるでしょう。結果、空き家が増えることにはなりません。

かつては、このように20代や30代と若いうちに親を亡くしていた人が多かったので、現代ほど空き家が増加することはありませんでした。しかし、平均寿命が延びたために50代や60代で実家を相続ことが多くなった結果、空き家が増え続けているのです。

上記では二人の息子の例を挙げましたが、もし二人とも娘ならばますます実家に引っ越す可能性は低くなります。結婚し家庭を持っている50代の娘が、親が亡くなり実家を相続したとしても夫と子供を連れて引っ越すかというと、これは相当例外的なケースといえます。

我が国は諸外国に比べて持ち家志向が強いといえます。「いつかはマイホーム」といわれるように、家を持つということは世のお父さんたちが頑張る目標となっています。このことも我が国の空き家の数が増え続けていることに影響していることは否定できないでしょう。

相続は争続

相続の約6割が不動産だといわれています。そして、相続に係る争いが絶えない原因は、不動産が絡んでいるためです。なぜなら、不動産は分けにくく換金しにくいからです。例えば、二人の息子が親から二千万円の預貯金と評価額六千万円相当の不動産を相続したとしましょう。長男が不動産を相続し次男が預貯金を相続すると、単純計算で長男の方が四千万円も多く受け取ることになります。当然、次男は不公平だとして相続額を均等にするため、兄に二千万円を現金でほしいと言うかもしれません。

ところが、長男は親の不動産を相続したからといって手元に二千万円もの現金があるとは限りません。弟に二千万円を支払うためには、その不動産を売却するしか方法はありません。しかし、すぐに売れるとは限りませんし急いで売ろうとすると買い叩かれる可能性もあります。そもそも、幼少期の思い出が詰まった実家をいくら住む予定がないからといって、そう簡単に売ることができない人が多いというのが現状です。

ならば、預貯金を半分ずつ相続して、不動産は兄弟で共有すればいいじゃないかと考えることもできます。しかし、不動産を共有することほどややこしいものはありません。例えば、兄弟二人で不動産を共有した場合、建物を修繕するにしても建て替えるにしても、お互いの意見が合わないと前に進みません。ましてや売却するとなると、なかなか意見は一致しません。売る時期や金額で必ずと言っていいほど兄弟で争います。その分けにくい不動産が平均して相続財産全体の6割を占めているというのですから、どうしても相続は「争続」になってしまうのです。

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