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空き家にも固定資産税は課税される
不動産を所有していると必ず負担しなければならないのが固定資産税です。固定資産税は、毎年1月1日現在に対象の不動産(土地・建物)や事業用の償却資産を所有している人が、その固定資産の価格を基に算定される税額を、その固定資産の所在する市町村に収める税金です。固定資産の価格である固定資産税評価額を基にした課税標準額に一定の税率1.4%(標準税率)を掛けて求めます。また、地域によっては都市計画税が課税されることもあります。これら二つの税金は、市町村が不動産の価値として定める固定資産税評価額をもとにした「課税標準」に基づいて額が決まり、毎年1月1日時点での不動産所有者に対して納税通知が届けられます。特に建物に関して言えば、現在居住している人が対象になるのはもちろんのことながら、空き家の所有者であっても納税の義務があります。固定資産税は不動産を所有している限り必ず負担しなければならない税金ですので、実際に居住しているか否かには関わりなく課税されることになります。
所有者が複数人いる場合の固定資産税の納付
固定資産税は、1月1日の翌日である1月2日に不動産を手放したとしても、1月1日に不動産を所有している限りその年1年間の固定資産税の全額を支払う義務があります。土地や建物を複数人で所有している場合、所有者全員が連帯して固定資産税を納付する義務があります。したがって、所有者の中に固定資産税を支払わない人がいた場合には、他の所有者に支払われていない分の固定資産税を納税する義務が生じます。
また、分譲マンションなど区分所有建物の敷地は、建物の区分所有者が専有面積に応じて共有する形式がとられています。このような場合でも区分所有者全員で連帯して納税する義務を負っているのが原則です。しかし、他人の滞納分を支払わせることには無理が生じます。このため、以下の二つの要件を満たす場合には連帯して納税する義務は負わず、それぞれが自分の持ち分に応じた税金を支払えばよいことになっています。
- 区分所有者全員が敷地を共有している
- 敷地と建物の専用部分の持分割合が一致している
税制面による空き家対策の必要性
空き家に固定資産税がかかるものの、土地に関しては更地で保有するより家屋が建っている方が固定資産税は優遇されます。通常の住宅用地では、小規模住宅用地(200㎡までの部分)は固定資産税評価額の6分の1、一般住宅用地(200㎡を超える部分)は固定資産税評価額の3分の1が「課税標準」となり、固定資産税が軽減されることになります。空き家を解体しようとすると、木造住宅で坪あたり3~5万円の解体費用がかかるだけでなく、上記の住宅用地の特例を受けられなくなり、固定資産税が数倍になってしまう可能性もあります。
特に地価が高騰している都心部では、この固定資産税の増額は痛い出費につながります。つまり、更地にするよりも空き家にしておく方が税金が少なくなるので、空き家が放置されたまま増加する原因の一つになっていました。ただし、「空き家等対策の推進に関する特別措置法」では、市町村長による勧告の対象となった「特別空き家等」に係る敷地(土地)については、住宅用地に係る特例の対象から除外されています。このため、空き家をそのまま放置しておくメリットはなくなりつつあります。
空き家を売却する場合にも控除がある
保有する不動産が「特定空き家等」に該当すると、固定資産税が高くなってしまう可能性があります。例えば、誰も使用する予定のない不動産を相続した場合、それが「特定空き家等」になってしまう前に売却するのも一つの方法です。政府としても相続を原因に新たな空き家が発生することを抑制すべく不動産の売却を促進するための税制を用意しています。
具体的には、平成28年4月1日から平成31年12月31日までに譲渡した一定の不動産の譲渡所得から3千万円を特別控除することができる特例措置が設けられています。この特例措置の対象となるのは、被相続人が居住していた家屋を相続日から3年経過した年の12月31日までに譲渡した場合です。耐震性のない家屋は耐震リフォームを施したうえで敷地とともに売却するか、家屋を取り壊して土地だけを売却する必要があります。
また、譲渡価額1億円以下などいくつかの要件がある他、市区町村から「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受ける必要もあるため、自分の不動産で所得控除が受けられるのかについては、税務署や税理士などの専門家に相談するのもよいでしょう。
固定資産税の特例について
固定資産税の税率については、各市町村は条例でこれとは異なる税率を定めることもできます。また、固定資産税にはいくつかの特例が設けられています。
1、住宅用地の特例
固定資産税の取り扱いにおいても、空き家の発生を抑制するための措置が講じられています。通常の住宅用地では小規模住宅用地(200㎡までの部分)の場合は、固定資産税評価額の6分の1、一般住宅用地(200㎡を超える部分)については3分の1と、特例により固定資産税が軽減されています。しかし、空き家対策の推進に関する特別措置法による勧告の対象となった空き家等に係る土地については、住宅用地に係る特例の対象から除外されることになっています。特例から除外された場合、固定資産税は最大で6倍となります。もし空き家状態で置いておくのであれば、定期的に清掃や修繕を施すなどして管理を怠らないようにする必要があります。
2、新築住宅の減額
新築住宅が一定の要件を満たす場合、家屋の固定資産税が2分の1に減額されます。なお、居住部分が120㎡までのものは全部が減額対象になりますが、120㎡を超える場合には120㎡に相当する部分だけが減額対象になります。減額期間は3階建て以上の耐火・準耐火建築物である住宅(マンションなど)は5年、それ以外の住宅(一戸建て住宅など)は3年です。居住用部分の床面積50㎡以上(賃貸住宅の場合は40㎡以上)280㎡以下であることが要件となっています。
3、耐震改修をした場合の減額
平成18年1月1日から平成30年3月31日までに、昭和57年1月1日以前の住宅について一定の耐震改修工事をした場合には、一定期間その住宅にかかる固定資産税を2分の1に減額するものです。この減額適用を受けるためには、耐震基準に適合した工事であることの証明も必要です。
4、省エネ改修をした場合の減額
平成20年1月1日に存在していた住宅(賃貸住宅を除く)について平成20年4月1日から平成30年3月31日までの間に、一定の省エネ改修工事をした場合には、工事が完了した翌年度分の固定資産税のうち3分の1を減額するものです。なお、必ず現行の省エネ基準に適合した改修であることが求められます。
平成29年度の税制改正での変更点
平成29年度の税制改正において、固定資産税の制度については複数の改正が行われました。主な改正点としては以下のようなものが挙げられます。
1、居住用超高層建築物にかかる課税の見直し
タワーマンションなどの居住用超高層建築物では、部屋が高層階であるほど売買価格(時価)が高くなります。しかし、各部屋の固定資産税については、建物全体の固定資産税の額を床面積で按分するため、高層階でも下層階でも床面積が同じであれば基本的には変わりませんでした。
このような状況に対して以前から不公平感を訴える声がありました。そこで、平成29年度税制改正では、固定資産税の負担の不公平を是正するため、高さ60メートルを超えるタワーマンションにおいては高層階の負担率を高く、低層階の負担率を低くする見直しを行いました。具体的には、これまでタワーマンション全体の固定資産税の額を単純に「専有部分の床面積」によって各戸に按分していましたが、改正後はこの「専有面積の床面積」を「階層別専有床面積補正率」で補正することになります。
改正の対象となる建物は、建築基準法上の「超高層建築物」のうち、複数の階に住戸が所在しているものとなります。また、適用期間は平成30年度より新たに課税されることになる居住用超高層建築物からということになります。
2、被災代替家屋等の特例
震災等によって滅失、損壊した家屋等の代替として、被災者生活再建支援法が適用された市町村において家屋等を取得した場合、4年間にわたり固定資産税等が2分の1に減額される措置が新設されました。この改正は、平成28年4月以降に発生した震災等により代替家屋等を取得した場合に適用されます。
3、被災住宅用地の特例の拡充
住宅が震災等によって滅失、損壊した土地について、その土地が被災市街地復興推進地域内にあって、住宅用地として使用できないと認められる場合、震災等の発生後4年間は固定資産税等に限り住宅用地とみなす措置が講じられました。これは従来2年間であった減額期間を4年間に拡充する改正となっています。この改正は、平成28年4月以降に発生した震災等による被災住宅用地に適用されます。