どんな手続きをするのか
民泊を適法に行う方法の一つとして、旅館業法上の簡易宿所営業の許可(旅館業法第2条第4項)を取得する手続きがあります。
- 事前相談
- 関係機関への照会・相談
- 申請手続き
- 建物の検査
- 許可の取得
1、事前相談
簡易宿所営業の許可を取得するのには、旅館業法だけでなく、建築基準法・都市計画法・消防法等の関係するすべての法令(自治体の条例を含む)の基準を満たさなければなりません。申請先である保健所に加えて、各法令を所管する部署と事前に相談し、法令に適合するように建物の設備・構造の整備などを行います。事前相談の際には、民泊を行う建物の図面などの資料を持参します。
例えば、用途地域など建築基準法の規制は各市区町村の建築指導課で、自動火災報知設備や誘導灯の設置など消防法の規制は建物所在地を管轄する消防署で相談することができます。
2、関係機関への照会・相談
申請を受理した保健所は、市区町村の建築指導課(建築審査課)、消防署都道府県庁などの関係部署に照会を行います。例えば、消防署に照会を行った場合、消防関係法令等に適合する旨を確認すると、消防署は通知書(消防法令適合通知書)を保健所に交付します。
照会の結果、法令上の問題が判明した時は、保健所から追加の書類提出が求められる場合があります。なお、建物所在地から110メートル以内に学校等(幼稚園、小学校、児童が利用する図書館、公園など)がある場合は、許可申請の前に当該学校等に対しても意見照会を実施し、了解を得る必要があります。その際の照会自体は、保健所等を介して行います。
3、申請手続き
旅館業法上の許可権者は都道府県知事(建物所在地が保健所設置市または東京23区の場合は市長または区長)です。しかし、実務上は建物所在地を管轄する保健所が申請先となっていますので、保健所の担当部署に申請を行います。
4、建物の検査
関係部署への照会が終わると、消防署の職員や保健所の職員が建物について法令上の基準に適合しているかどうか検査を行います。なお、厳密な流れとしては、A、消防署の手続き、B、消防署の検査、C、消防法令適合通知書交付、D、保健所の手続き、E、保健所の検査、となります。
5、許可の取得
以上の手続きを経て、関係する全ての法令(自治体の条例を含む)の基準を満たしていると判断されると、保健所より簡易宿所営業の許可が下ります。
許可申請書には何を書くのか
簡易宿所営業の許可申請をする時に作成する申請書は「旅館業営業許可申請書」です。
- 民泊を行う建物(営業施設)の名称
- 営業施設の所在地
- 営業の種別(簡易宿所営業である旨を記載)
- 営業施設の構造設備の概要
- 申請者に旅館業法違反該当の有無(※)
- 建物管理者の氏名
(※)「旅館業法第3条2項1号~3号の事由」にあたるかどうか及び該当する時はその内容
5に該当する場合、保健所は許可を与えないことができると規定されています。許可が下りないと民泊ビジネスを行えませんが、虚偽記載は公正証書原本不実記載罪(刑法第157条)という犯罪行為になり得ますので、申告書は正確に書かなければなりません。
1号 | 旅館業法または旅館業法に基づく処分に違反して刑に処せられ、その執行を終え、または執行を受けることがなくなった日から起算して3年を経過していない者(個人・法人) |
2号 | 旅館業法上の許可を取り消され、取り消しの日から起算して3年を経過していない者(個人・法人) |
3号 | 業務を行う役員の中に1号または2号の該当者がいる法人 |
添付書類などについて
許可申請書の添付書類として提出する主な書類は、下記の通りです。
- 付近見取図
- 建物に関する各図面
- 定款の写しや登記事項証明書
その他、自治体や建物所在地によっては、追加して提出すべき添付書類が生じる場合があります。特に京都市では、地域との調和に関する添付書類が重要となります。また、申請手数料も自治体によって異なります。(1~2万円台が多いですが、事前の確認が必要です。
1、付近見取図
付近見取図とは、建物を中心にその周辺を示した地図のことです。簡易宿所営業の許可申請の際は、営業施設から半径200~300メートル以内の住宅、道路、学校などが記載された見取図を作成します。
2、建物に関する各図面
配置図(建物の配置や敷地との位置関係を示した図)、各階平面図(建物を上から見た図)、正面図(建物を前から見た図)、側面図(建物を横から見た図)を作成します。客室などにガス設備を設ける場合は、ガスの配管図の作成も必要となります。
3、定款の写しや登記事項証明書
申請者が法人である場合にのみ提出が義務付けられています。登記事項証明書は6ヶ月以内んい発行されたものを提出します。