解体して更地にする際の費用と税金
築年数が長い空き家(古家)が建っている土地を売る時は、古家に資産価値があるかどうかが問題となります。一般的に古家には資産価値がほとんどありませんが、稀に文化財的価値がある場合や、敷地が史跡指定されている場合などもあります。これらの場合に古家を勝手に解体すると、文化財保護法や文化財保護条例等への違反が問われる可能性があるため、自治体に確認を取っておく必要があります。
一方、解体すること自体に支障がない時でも、解体費用を捻出できるかどうかという問題が発生します。解体費用は100万円~250万円程度が目安で、古家の延べ床面積(各階の居住部分面積の合計)が多いほど解体費用が高額になる傾向があります。ただし、空き家対策の一環として、各自治体で解体費用の補助金を交付する制度を導入している場合があります。解体前に自治体に制度の有無や内容を確認しましょう。なお、木造住宅であればアスベストが使用されている可能性は低いといえますが、古家が集合住宅など規模の大きい住宅である場合、念のためアスベスト使用の有無を確認する必要があります。
更に、古家を解体して更地にした際には、その翌年から土地の固定資産税と都市計画税が上がることに注意しなければなりません。特に固定資産税は3~4倍程度になることが予想されます。売却する相手がすでに決まっている場合を除き、無計画に解体してしまうと税金の負担が重くのしかかる可能性があります。
そして、古家を解体した場合には1ヶ月以内に滅失登記を申請しなければなりません。登録免許税は不要ですが、土地家屋調査士に代行を依頼すると5万円程度の費用がかかります。滅失登記を行わないと古家が存在していると扱われ、固定資産税が課税されることがあります。
問題が発生する場合がある
古家を解体したらそれで終わり、という訳にはいかない場合があります。解体後の更地(土地)について、さまざまな問題点が見つかることがあるからです。例えば、1、地中に埋設物がある、2、隣地との境界が不明確、3、再建築するのに支障が生じる、などが問題点として挙げられます。解体費用以外の追加費用が発生する可能性も想定しておく必要があります。
1、地中に埋設物がある
下水道を整備した後に浄化槽(汚水処理に用いていた設備)を地中に埋めたままにしているなど、地中に廃棄物が埋まっており、この廃棄物が原因で土壌汚染が生じている場合があります。土地を売却した後に発見された時は、買主から埋設物の解体や除去にかかる費用を請求される可能性があり、深刻なトラブルになりかねません。
2、隣地との境界が不明確
隣地との境界線が不明確な場合は、そのままでは解体後に土地を売却することが難しいため、隣地との境界線を確定させる手続き(筆界特定制度など)を利用することになります。境界には「公法上の境界」(筆界)と「私法上の境界」(所有権界)という2つの意味があります。公法上の境界とは、登記制度に反映されている地番と地番の堺のことで、不動産業界や専門家の間では通常「筆界」と呼ばれています。公法上の境界は国が決めるべき事柄で、隣り合う土地の所有者間で決定できる性質のものではありません。そこで、公法上の境界について争いがある場合、境界確定訴訟(筆界確定訴訟)という訴訟を提起する必要があります。
境界確定訴訟とは、隣接する土地を挟む公法上の境界が不明な場合に、裁判所が公法上の境界を確定させる訴訟のことです。公法上の境界の位置が特定された際、それをお互いに確認する意味で「筆界確認書」を作成し、お互いの署名と実印の押印をし、印鑑証明書を添付して保管します。
これに対して、私法上の境界とは、土地に関する所有権の範囲を問題とするもので、隣接地の所有権との境界線を意味しており、「所有権界」とも呼ばれています。司法上の境界については、隣接する土地の所有者間の取り決めによって決めることが可能です。
3、再建築に支障が生じる
周りの家々に目を配ると多くの場合、敷地が道路に面していることがわかります。これは接道義務(建築基準法第43条)に規定されているからです。接道義務とは、建築物を建てる敷地は原則として幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならない規定です。接道義務が規定されている道路は、建築基準法第42条に列挙されています。
- 道路法で定める道路(国道・都道府県道、市区町村道)
- 都市計画法等で定める道路
- 建築基準法の規定が適用されるに至った時(基準時)に存在していて行政庁から指定を受けた道路(2項道路)
- 都市計画法等による事業計画のある道路で、2年以内に事業執行予定のものとして特定行政庁(市町村長または都道府県知事)による指定をうけたもの
- 特定行政庁からの指定を受けた位置指定道路
原則として、これらの道路に接道義務を満たしていない土地の建物は再建築ができません。接道すべき具体的な広さについては、地方自治体の条例で定められています。なお、地方自治体は接道義務について必要に応じて制限を加えることはできますが、制限を緩和することはできません。接道義務があるといっても、我が国には幅が4メートルに満たない「2項道路」に建築物が建ち並んでいる状況が数多くあります。そのため、幅員4メートル未満の2項道路に面する土地上に建物を建築する時は、道路中心線から2メートル後退して建物を建てなければならないことになっています。これを「セットバック」といいます。