不動産で相続財産となるもの・ならないもの

相続財産となるもの

借地権・借家権

他人の土地を借りて、その土地に建物を建てて住んでいる場合があります。(借地権)また、他人の建物を借りて住んでいるという場合もあります。(借家権)このような場合に借りる契約をした当事者が亡くなってしまったら契約はどうなるでしょう。

結論からいうと、この契約上の借主としての地位も相続財産となります。したがって、相続人は相続によって借地権や借家権を取得することになり、地主や家主に対して権利を主張することができます。

民法は土地や建物の賃貸借の場合、その賃借権を誰かに譲り渡したり、また、転貸(又貸し)する場合には貸主の承諾を必要としています。しかし、相続により取得する場合には、その承諾は必要ありません。

親が子に賃借権を譲り渡したいという場合には、貸主の出方によっては、生前に名義変更しないで相続まで待った方が有利です。生前に変更しようとすると、貸主の承諾が必要となりますから、承諾を拒否されたり、また、高額の承諾料を要求されることもあるからです。

相続財産とならないもの

公営住宅の使用権

民間の借家の場合は、先述のように賃借権は相続の対象ですが、府営(県営や都営)や市営住宅など、公営住宅の場合は民法上の権利ではなく公法上の権利であるため、少し異なります。

公営住宅は公営住宅法の適用を受けますが、この法律では、低所得者に対して低廉な家賃で住宅を提供することによって、国民生活の安定や社会福祉増進に寄与することを目的として、入居資格や入居者の選考基準を厳格に定めており、各地方自治体の条例でも公営住宅法の趣旨に基づいて同様の基準を定めています。

それにもかかわらず相続による使用権の承継を認めてしまうと、入居資格のない人でも相続によって入居できる場合が生じるという不都合があるのです。

平成2年の最高裁判例でも、公営住宅の使用権に関しては、相続による承継を否定しています。ただ、入居者が死亡したときでも、同居の親族の場合には、各地方自治体の条例に従って手続きをすれば承継が認められるのが普通です。

内縁の妻の相続権

相続人がいない場合には、借地借家法によって、内縁の妻等は借家権を引き継ぐことができます。もし、借家権を引き継ぐ気がなければ、1ヶ月以内に引き継がない旨を表明しなければなりません。

しかし、借地権に関しては、このように内縁の妻等が権利を引き継ぐ制度はありません。

お墓

法律上、お墓や霊園の永代供養権は「祭祀財産」と呼び、相続財産には含まれません。お墓を承継する場合は、まず、そのお墓を所有していて亡くなった人の意思が重視されます。つまり、お墓の所有者の意思によって承継されるのです。

誰を承継人とするかは、生前の指定でも遺言による指定でも構いません。そして、承継人は相続人や親族以外でも構いません。

承継人の指定は口頭でもよいのですが、後日の紛争を防止するためにも、できるだけ書面で残した方がよいでしょう。また、お墓を承継する場合には、通常は仏壇や仏具も承継することになります。もし、これらが非常に高価なものであっても、これも祭祀財産であり、相続財産とはなりません。

借地権・借家権の相続手続き

借地または借家の賃貸借契約書の賃借人の名義を書き換えはしなくても対抗できますが、した方がよいでしょう。手続きは、地主または家主とすればよく、あるいはその委任を受けた宅地建物業者(不動産業者)が事務手続きを代行することも多くあります。

必要な書類は、相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)、被相続人(借地人または借家人)の除籍謄本(全部事項証明書)、遺産分割協議書(相続人が複数の場合)などです。名義書換料などは原則不要です。

相続財産の調査方法

1、銀行

預金通帳で残高を調べるだけでなく、集金の担当者などにも問い合わせた方がよいでしょう。また、普通預金や定期預金だけでなく、当座預金も忘れてはいけません。銀行名・支店名・口座の種類・番号を確認します。

2、保険会社

被相続人が生命保険に加入していた場合には、その保険の種類と内容の確認が必要です。

3、証券会社

株式は会社に対する名義だけはあっても、株券は処分(例えば借金の担保に第三者に渡したなど)されていて、遺産としては存在していないこともありますので、確認が必要です。

4、取引先

被相続人が事業を営んでいた場合は、その取引先との財産関係も調査しなければなりません。取引先に対して、売掛金の有無や未払金の有無などを問い合わせましょう。

5、法務局(登記所)

土地や建物に関して、法務局で調査することは最も重要なことの一つです。登記簿を閲覧(登記事項要約書の交付)することによって、不動産の所有名義人が誰か、また抵当権などの担保権の有無が明確になります。

場合によっては、第三者の借金の担保として、不動産に担保権が設定されていることもありますし、被相続人の土地だと思っていたら、借地だったということもよくあります。綿密に調査する必要があるでしょう。

※相続財産調査の際には、被相続人の死亡診断書や、自分が相続人であることを証明するために、相続人全員の戸籍謄本(全部事項証明書)・除籍謄本(全部事項証明書)・改製原戸籍・住民票などを用意します。なお、忙しかったり手に負えない場合は、司法書士に頼むことをお勧めします。

「不動産相続をめぐるトラブルと解決法」

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