農地の相続と遺産分割協議

農地の遺産分割協議の注意点

農地の相続といっても、基本的には農地も遺産の一種であり他の遺産相続と変わることはありません。異なるのは、後継者がまとめて農地を相続しなければ、通常、農業を続けていくことができない点です。

こうした事情を考慮して遺産分割をすることになりますが、農業をしていた人(被相続人)が亡くなった場合には、遺産は農地がほとんどを占めることになりますので、トラブルとなれば大問題となります。

農地の相続も、必ずしも法定相続分どおりでなくてよく、一般的には一定の額(法定相続分より少ないことが多いようです)を支払うという代償分割による場合が多いようです。ただし、中には他の相続人にお願いして「相続分がないことの証明書」を出してもらい、農地の所有権移転登記をすることもあるようです。

現在、農地については後継者への生前贈与も行われているようですが、農地の生前贈与についても他の土地と変わりはなく特別受益としてその額は相続時の遺産に加算して各人の相続分(額)が決まります。したがって、遺留分を侵害する場合には、侵害された者から減殺請求をされると、その額を支払わなければなりません。

遺産分割協議においては、各相続人の事情の一切を考慮して行う必要がありますので、農地の相続では、農業の後継者である相続人の意向を十分配慮する必要があるでしょう。なお、被相続人の生前から農業等の事業を手伝っていた後継者には、得ていた対価にもよりますが、通常は寄与分があります。

農地の相続をめぐるトラブル

配偶者と子の相続で、子のうち一人が農業の後継者というケースであれば、そこは家族、話し合えば代償金を少なくするなどの方法で解決できるのではないでしょうか。

ただし、今までは後継者以外の相続人が相続を放棄することや「相続分がないことの証明書」を出すことなどにより実質的に後継者が農地等を相続する方法がとられているケースもあったようですが、各相続人が自分の相続権を主張するようになるとそうはいきません。きちんと財産目録を作成し、農地等の評価額や収入なども明確にして事情を説明して納得してもらうことが必要です。

また、農地の相続では後継者である相続人と他の相続人が仲が悪い場合が問題です。仲の悪い婚姻外の子(いわゆる愛人の子)がいたりすると、農業の後継者であることなどは問題視されず、法定相続分を要求されると大変なことになります。

こうした場合は、遺産分割協議では話し合いがつきませんので、家庭裁判所に調停あるいは審判の申立てをすることになります。家庭裁判所では、農業の後継者という事情を考慮して調停や審判がなされますが、代償金については法定相続分を基礎として算定されるでしょう。

農地の相続についての考え方

農業の後継者が農地を相続する場合に、他の遺産がほとんどなければ遺産分割協議においては、とにかく後継者が農地を相続できるように納得してもらうか、その際に他の相続人に代償金を支払うかで解決するしかありません。

代償金の額は、遺産分割協議によることになりますが、0円で話をつけても、法定相続分の額で話をつけても構いません。農業の後継者に寄与分や農業に伴う借金がある場合もあることなどを考えれば、意外とこの代償金は少なくて済むかもしれません。被相続人の妻(母)も一緒に農業をやっていれば、母も農地等を相続することでとりあえず農地の分散は防ぐことができます。

「不動産で相続財産となるもの・ならないもの」を読む

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