相続の基礎知識

税制改正で2人に1人が相続税対象者に

相続税は一部の金持ちだけの話で自分には関係ない、とお考えの方も多いでしょう。ところが、平成27年の税制改正の施行によって事情が大きく変わりました。これまで、東京国税局管内において、相続税の申告対象者は5人に1人の割合でしたが、新しい相続税法ではその割合が2人に1人となりました。

相続税を計算するには、まず相続財産全体から債務や葬式費用などの控除額を差し引いた課税価格を算出します。そして、その課税価格から基礎控除額を差し引いた金額に対して、定められた割合で課税されます。今般の税制改正では、この基礎控除額が引き下げられたのです。新旧の基礎控除額を比較してみましょう。

相続税の基礎控除額
  • 基礎控除額(旧)…5千万円+1千万円×法定相続人の数
  • 基礎控除額(新)…3千万円+6百万円×法定相続人の数

例えば、母親が亡くなり兄弟3人が相続する場合、以前は8千万円以内であれば相続税は課税されませんでした。ところが、新しい税法では4800万円を超えると相続税の課税対象になってしまうのです。

同じく、兄弟2人が相続する場合、以前は7千万円以内だったのが4200万円になったのです。我が家には関係ない話だ、と思う方もいるかもしれませんが、決して関係ないことではありません。大都市圏に住んでいる人ならば、土地付きの一戸建てがあれば、それだけでかなりの評価額となります。

相続税の申告期限は10ヶ月

相続税は、相続が開始してから(被相続人が亡くなってから)10ヶ月以内に申告しなければならないと定められています。10ヶ月というと一見長いように感じるかもしれませんが、その間に処理すべき事柄はたくさんあります。本来、相続は親が亡くなった時点からスタートするものです。ところが、最初の2ヶ月はお葬式や各種手続き等、やるべきことが山ほどありあっという間に日にちは経ってしまいます。

相続は、まず遺言書があるかどうかを確認することから始めます。遺言書の有無によって、相続の進め方は大きく違ってきます。遺言書がある場合は、基本的には遺言書どおりに遺産分割することになります。遺言書で指定された人が指定された財産を相続します。

遺言書がないときは、相続人の間で遺産分割協議をする必要があります。遺産をどのようにして分けるのかを相談して決めるわけです。その準備で、税理士に財産目録を作成してもらうのが一般的です。税理士は、相続財産の評価(故人が遺した財産を全て調べて明細を作ること)をして、相続税について説明します。あとは相続人の間で話し合うのが基本です。

さて、遺産分割協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成して相続税を計算します。そして、相続税申告書を作成して税務署に申告し相続税を納めるという手順になります。相続税申告書の提出期限は、相続税の支払い期限と同じく10ヶ月以内です。

納税は現金納付が一般的ですが、延納や物納という方法もあります。相続税の課税対象であるのに期限までに相続税の申告をしないと、無申告加算税が課せられます。更に、相続税を支払わなくてはならないのに支払いが遅れると、延滞税が課せられてしまいますので注意が必要です。

相続人になれる人となれない人

血縁関係にあるからといって誰でも遺産を相続できるわけではありません。その範囲や優先順位は民法で定められており、遺産を相続する権利のある人は相続人と呼ばれています。では、相続人になれる人となれない人をみていきましょう。

1、配偶者

配偶者は、常に相続の権利があります。ただし、同居していても婚姻関係にない人(いわゆる事実婚や内縁関係)は相続の権利は発生しません。離婚した相手も相続の権利はありません。

2、子供

子供は、常に相続の権利があります。実子であっても養子であっても、婚姻関係にない相手の子供(故人が男性の場合、その子を認知していることが必要)であっても、全員に権利が発生します。重要な点は、前妻や前夫には相続の権利はありませんが、その子供には権利があるということです。また、養子も相続人になれるため、相続対策として祖父母が孫を養子にすることもあります。その利点は、祖父母→親→本人という二度の相続で相続税が2回かかるよりも、祖父母→本人という1回の相続にすることで相続税が節税できることです。欠点は、相続税額が2割加算になることです。ただし、資産家ならば、それでも相続税が2回かかるよりも節税効果があります。

3、孫

本来の相続人である子供が先に亡くなっていて、しかもその人に子供(故人にとっては孫)がいる場合、その孫が相続人になれます。同じく、子も孫も亡くなっている場合、ひ孫が相続人になれます。

4、親

故人に、子も孫も(ひ孫以下も)いない場合、故人の親が相続人になります。

5、兄弟姉妹

故人に、子供、孫、ひ孫以下、親もいない場合、故人の兄弟姉妹が相続人になれます。

遺言書の重要性

遺言書を作成しておけば、相続人でない人にも遺産を相続することができます。例えば、愛人や認知していない子供をはじめ、生前お世話になった恩人などの血縁関係にない人でも相続は可能です。

民法では、どの法定相続人にどういう比率で財産を分ければよいかという法定相続分が示されています。配偶者と子供で相続するときは配偶者が2分の1、残りの2分の1を子供が均等に分けます。配偶者がすでに亡くなっており子供だけで相続するときは、全体を子供の数で均等に分けます。

この法定相続分は、あくまでも原則的な基準です。ですから、相続人の間で話し合いさえつけば、一次相続で配偶者が100%相続することも可能ですし、二次相続で本家が7割でも8割でも相続して構いません。また、法的に有効な遺言書があれば、法定相続分に関係なく遺言書の内容に基づいて遺産を分割することになります。

「二次相続と相続税の軽減制度」を読む

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